情報処理学会 バイオ情報学研究会 (SIG BIO)

  • 論文誌 IPSJ Transactions on Bioinformatics (TBIO)

  • バイオ情報学研究会について

    設立趣旨

    本研究会は,バイオ情報学の研究者,学生が,その情報処理的側面を中心に研究成果を発表し,切磋琢磨する場を用意して,そこにバイオサイエンス系の 研究者も参加するかたちで,この分野の発展に寄与することを目指す.

    20世紀後半における科学技術の発展の中心は,情報科学とバイオサイエンスであった.世界中の数億台のコンピュータがネットワークで接続され,ゲノ ム配列の解明が進んだ.21世紀は,この両分野が協調して,いよいよ生命の謎を解明し,人類の進歩に役立てる時代である.

    分子生物学の歴史は,コンピュータの歴史と大体同じで,約50年にすぎない.始まりは,1953年のDNAの2重らせん構造の発見である(ちなみ に,現代のコンピュータは1945年ごろに発明されている).それ以来,「DNA-RNA-タンパク質」という遺伝情報の流れに関する中心教義の下に,ま ずゲノム配列の解明が進み,2重らせん構造の発見から50年を経た2003年の4月には,ヒトゲノムの解読が終わったという国際共同宣言が行われた. DNA文字列としては,ほとんど読み終わったという宣言である.

    ゲノム配列情報の解明はその後も進んでおり,180種を超す様々な生物の全ゲノム配列情報が明らかにされた.そして,ゲノム配列情報を基礎に,遺伝 子発現に注目したトランスクリプトーム解析,遺伝子産物であるタンパク質に照準を合わせたプロテオーム解析などの新しい技術を用いて,今までできなかった 規模での,生命活動の網羅的,系統的な解析が可能になっている.この結果,わたしたちは,生物の機能を遺伝子とタンパク質のネットワークとして理解するこ とができるようになりつつあり,バイオサイエンスの基礎と応用研究に革命が起こることが期待されている.バイオ情報学は,そこにコンピュータを大いに活用 することを目指している.

    情報科学にとって,バイオサイエンス分野への展開は新しい挑戦である.膨大なゲノム配列情報や,関連する情報は日々に増大している.いまわたくした ちの回りに山積するバイオサイエンス情報を整理し,有効な情報として活用可能にしていくためには,新しい方法論の開拓を含めて,情報科学が必須である.情 報科学にとってはいわば古典的なHMM,各種の言語モデル,動的プログラミングの技法などがDNA解析の初期から活用されてきたし,超並列コンピュータに よる高速計算も盛んである.今後さらに,機能情報と配列情報やタンパク質の構造情報を統合的に解析して,新たな生物学的知識を発見するために,バイオサイ エンスと情報科学との融合研究の展開が必要である.また,ゲノム機能解析のための新しい方法論の開拓,さらには生命現象そのものを情報科学の立場からの解 明すること,脳の働きを情報システムとして理解すること,逆に生命現象を活用する新しい計算アーキテクチャの研究,医療情報学への応用も欠くことができな い.

    バイオ情報学と総称される生命科学と情報科学の境界領域は,このように魅力的かつ社会的必要性の大きな学問領域でありながら,バイオサイエンス・情 報科学の双方の持つ学問としての指向性の相違が,相互連携の妨げとなっている面がある.わが国にも,バイオ情報学に関する学会がすでに存在し,国際シンポ ジウムなども活発に開催されているが,いずれもいわゆる理学系の学会運営である.国際会議を例にとれば,比較的少数の厳選された研究の口頭発表と,多数の ポスター発表とで構成されることが多い.情報系の研究者,学生がバイオ情報学のための計算アルゴリズム,並列処理などについて,情報工学の面から討論でき る場は,現状では限られている.

    本研究会は,情報系の研究者,学生がバイオ情報学の情報科学的側面について研究成果を発表し,切磋琢磨する場を準備して,そこのバイオサイエンス系 の研究者も参加するかたちで,この分野の発展に寄与することを目指している.

    主な研究分野(研究会設立趣意書から)

    2024年度研究会役員

    主査
    佐藤 健吾(東京電機大学)
    幹事
    大林 武(東北大学)
    加藤 有己(大阪大学)
    倉田 博之(九州工業大学)
    運営委員
    伊藤 公人(北海道大学)
    遠藤 俊徳(北海道大学)
    大上 雅史(東京工業大学)
    鎌田 真由美(北里大学)
    渋谷 哲朗(東京大学)
    瀬尾 茂人(大阪大学)
    田口 善弘(中央大学)
    遠里 由佳子(立命館大学)
    福永 津嵩(早稲田大学)
    吉本 潤一郎(藤田医科大学)
     過去の研究会役員

    発起人(研究会設立にご支援いただいた皆様)

    秋山泰(産業技術総合研究所) 柴勉(DNAチップ研究所) 廣安知之(同志社大学)
    阿久津達也(京都大学) 下條真司(大阪大学) 福田晃(九州大学)
    浅井潔(東京大学) 城和貴(奈良女子大学) 牧之内顕文(九州大学)
    有澤博(横浜国立大学) 菅原秀明(国立遺伝学研究所) 松岡聡(東京工業大学)
    江口真透(統計数理研究所) 諏訪牧子(産業技術総合研究所) 松田秀雄(大阪大学)
    遠藤俊徳(北海道大学) 関口智嗣(産業技術総合研究所) 美宅成樹(名古屋大学)
    岡本正宏(九州大学) 染谷博司(統計数理研究所) 宮崎智(東京理科大学)
    小野 功(徳島大学) 高木利久(東京大学) 宮野悟(東京大学)
    金久實(京都大学) 田中譲(北海道大学) 森健策(名古屋大学)
    加納健(日本電気株式会社) 辻井潤一(東京大学) 森下真一(東京大学)
    川人光男(ATR脳情報研究所) 土居洋文(セレスターレキシコサイエンシズ) 山村雅幸(東京工業大学)
    北上始(広島市立大学) 銅谷賢治(沖縄科学技術大学院大学) 山本克之(北海道大学)
    倉田博之(九州工業大学) 徳山豪(東北大学) 米田晴祥(三菱スペース・ソフトウェア)
    小板隆浩(同志社大学) 冨田勝(慶應義塾大学) 渡邉日出海(北海道大学)
    郷信宏(日本原子力研究所) 中井謙太(東京大学) 石井信(奈良先端科学技術大学院大学)
    小島功(産業技術総合研究所) 仲尾由雄(富士通研究所) 小笠原直毅(奈良先端科学技術大学院大学)
    五條堀孝(国立遺伝学研究所) 中田秀基(産業技術総合研究所) 金谷重彦(奈良先端科学技術大学院大学)
    五斗進(京都大学) 中村春木(大阪大学) 川端猛(奈良先端科学技術大学院大学)
    小長谷明彦(理化学研究所) 名嘉村盛和(琉球大学) Gotum BASU(奈良先端科学技術大学院大学)
    齋藤彰一(和歌山大学) 馬場知哉(慶應義塾大学) 鹿野清宏(奈良先端科学技術大学院大学)
    齊藤豊(日本オラクル株式会社) 原良憲(日本電気株式会社) 土井晃一(奈良先端科学技術大学院大学)
    坂田克己(三菱スペース・ソフトウエア) 平田富夫(名古屋大学) 松本裕治(奈良先端科学技術大学院大学)
    佐藤賢二(北陸先端科学技術大学院大学) 広田雅彦(日立ソフトウェアエンジニアリング) 湊小太郎(奈良先端科学技術大学院大学)
    佐藤仁則(三菱スペース・ソフトウエア) 樋口知之(統計数理研究所) 森浩禎(奈良先端科学技術大学院大学)